2018年1月21日日曜日

コラム:フランスの建築家資格と日本の建築士資格1

 今回は、コラムとしてフランスの建築士の資格について説明します。
(以下の情報は、筆者が資格を取得した時のものです。制度は随時変わっていくので、参考として扱ってください。)

  建築学校のプログラムは10年ほど前に大きな改革があり、6年制から国際的な基準に合わせた、学士3年、修士2年という計5年制のプログラムに変わりました。それに合わせて、建築家の資格の名称も変わり、それまではArchitecte DPLGと呼ばれていたものが、建築学校を卒業した時点でArchitecte Diplômé d'Etat (ADE)、もしくはDiplôme d'Etat d'Architecte (DEA)という名称に変わりました。設計事務所で所員として仕事をする場合には、この資格だけで差し支えありません。しかし、自分で事務所を立ち上げる、または個人で仕事を受けて建築家として働く場合には、さらにL'Habilitation à exercer la Maîtrise d’Oeuvre en son Nom Propre (HMONP)という資格が必要になります。2段階制ということですね。まあ、学校で学ぶことと実務で必要になる知識は違うので当然とも言えます。

  HMONPを取得するには、6ヶ月間の実務経験と建築学校で行われる講義に定期的に出席し、最後に筆記試験を受けます。この講義で学ぶのは法規や設計者の立場、契約の種類など実務的な内容です。学外から実際にその分野の専門家が来て講義をしてくれたので、割と面白かった記憶があります。それと並行して実務経験で学ぶべきことリスト、みたいなものを渡されて、6ヶ月間に学んだことにチェックをつける、ということになっていましたが、リストをみた事務所のボスは「これ全部学ぼうと思ったら10年かかるわよ」って言ってました。まあ、知識的に触れておけって感じなんでしょう。

  筆記試験とは別に最後に面接があります。実務経験を通して学んだ知識を織り交ぜつつ、システムの問題点を指摘する、つまり体制に対する自分の意見を述べるというようなことが必要で、前もってレポートを提出し、そのレポートをもとに試験官の質疑応答に答えるのですが、要領がわからず結構苦労しました。でも、私を含め私の周りにも日本人でこの資格を取っている人もいますし、外国人留学生に絶対取れないというわけではありません。

  このHMONPの資格を取って、それぞれの地方ごとにあるL'Ordre des Architectesというところに登録をして、独立した建築家として仕事をすることができます。日本でいうところの建築士の資格がないと事務所登録ができないようなものだと思っています。

  次回は、このフランスの資格を取った後、一級建築士の特例制度を使って日本の資格を取る方法についてまとめます。


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