2018年1月22日月曜日

コラム:フランスの建築家資格と日本の建築士資格2

前回に引き続いて、今回はフランスの建築家の資格を所得した後に、日本で一級建築士の資格を取る方法についてお話しします。
(前回と同様、以下の情報は筆者が資格を取得した時のものです。最新の情報については関係機関に問い合わせてください。)

日本の建築士法の第4条第3項に以下のようにあります。

「外国の建築士免許を受けた者で、一級建築士になろうとする者にあつては国土交通大臣が、二級建築士又は木造建築士になろうとする者にあつては都道府県知事が、それぞれ一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士と同等以上の資格を有すると認めるものは、前二項の試験を受けないて、一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士の免許を受けることができる。」(20181月現在)

さて、フランスの建築家の資格が取れたので、この建築士法第4条があるのをいいことに日本の一級建築士の資格を取ることにしました。「取らないと気になるけど、取っても食えない」と言われる一級建築士ですが、まあ取っておくに越したことはなかろうと思ってのことです。

一級建築士の資格は国土交通省が管理しているので、国土交通省に問い合わせをしました。これこれこういう理由で一級建築士の特例申請をしたい、というと担当の部署を教えてくれます。担当部署へ問い合わせをすると、まず取得している外国資格の説明、その資格試験の説明、外国の建築学校の教育課程の説明、成績表、卒業証明書、主な実務実績、履歴書、今後の日本での活動予定、などをまとめたものを提出する必要がありました。
翻訳したりしなければならないので、結構時間がかかったのを覚えています。一級建築士の試験勉強の他にこのような書類作成に時間が取られたのは、個人的に結構しんどかったです。

必要書類をまとめて申請書と一緒に提出をすると、外国での実務経験年数、日本での実務経験年数に合わせて試験内容が言われます。(この辺は問い合わせをした時に担当の人に聞いてみるといいと思います。)私は実務経験もまだ浅く、日本での実務経験も無かったので、学科5科目(当時)全ての試験を受けることでした。ただ学科のみで、これが国土交通省が定める基準に達していれば、製図試験は受けなくて良い、というもの。友人にも「学科は勉強すれば取れるけど、製図はコツがあって資格学校に通わないとキビシイ」と言われていたので、製図パスは結構嬉しかったです。

一緒に受けた方で、実務経験年数があるので「構造」と「法規」のみという試験を受けている方がいましたが、これは実は逆に大変そうでした。なぜかというと、おそらくこの2科目は点数を稼ぎづらいからです。4科目、5科目あると自分の得意な科目で点数を稼いで、構造、法規が少し低くても総合で基準点に達していれば合格ですが、構造と法規だけだとその2科目で基準点に達しないといけないからです。あと、その上にさらに論文のみで受ける、という試験がありますが、これは合格率がものすごく低いという噂を聞きました。(外国の有名人建築家が受けて、軒並み落ちてるとか何とか。。まあ、真偽のほどはわかりませんが。)

いずれにせよ、私個人的にはせっかく特例があるのだから、この先日本で仕事をしようという気があれば、なるべく早めに取っておくことをお勧めします。試験を受けた時、フランスの設計事務所で所員として働いていましたが、コンペなどがなければ夜8時くらいには家に帰れるので、そのあと2時間〜3時間くらいは勉強する時間が取れ、それも助かりました。休日はよくエッフェル塔の目の前にあるcité d'architectureの図書室(建築学生か建築家なら無料で使用できる)か、追い込みの時期はポンピドゥセンターの図書室に行って勉強をしていました。ポンピドゥの図書室は普段は何時間も待たないと入れないのですが(ちなみに誰でも入れる)、一級建築士の試験がある7月くらいになると、夏休みで学生などがいなくなり人が減るからです。ポンピドゥセンターで一級建築士の勉強とはなんとも優雅だったなあ、と今では思います。

2018年1月21日日曜日

コラム:フランスの建築家資格と日本の建築士資格1

 今回は、コラムとしてフランスの建築士の資格について説明します。
(以下の情報は、筆者が資格を取得した時のものです。制度は随時変わっていくので、参考として扱ってください。)

  建築学校のプログラムは10年ほど前に大きな改革があり、6年制から国際的な基準に合わせた、学士3年、修士2年という計5年制のプログラムに変わりました。それに合わせて、建築家の資格の名称も変わり、それまではArchitecte DPLGと呼ばれていたものが、建築学校を卒業した時点でArchitecte Diplômé d'Etat (ADE)、もしくはDiplôme d'Etat d'Architecte (DEA)という名称に変わりました。設計事務所で所員として仕事をする場合には、この資格だけで差し支えありません。しかし、自分で事務所を立ち上げる、または個人で仕事を受けて建築家として働く場合には、さらにL'Habilitation à exercer la Maîtrise d’Oeuvre en son Nom Propre (HMONP)という資格が必要になります。2段階制ということですね。まあ、学校で学ぶことと実務で必要になる知識は違うので当然とも言えます。

  HMONPを取得するには、6ヶ月間の実務経験と建築学校で行われる講義に定期的に出席し、最後に筆記試験を受けます。この講義で学ぶのは法規や設計者の立場、契約の種類など実務的な内容です。学外から実際にその分野の専門家が来て講義をしてくれたので、割と面白かった記憶があります。それと並行して実務経験で学ぶべきことリスト、みたいなものを渡されて、6ヶ月間に学んだことにチェックをつける、ということになっていましたが、リストをみた事務所のボスは「これ全部学ぼうと思ったら10年かかるわよ」って言ってました。まあ、知識的に触れておけって感じなんでしょう。

  筆記試験とは別に最後に面接があります。実務経験を通して学んだ知識を織り交ぜつつ、システムの問題点を指摘する、つまり体制に対する自分の意見を述べるというようなことが必要で、前もってレポートを提出し、そのレポートをもとに試験官の質疑応答に答えるのですが、要領がわからず結構苦労しました。でも、私を含め私の周りにも日本人でこの資格を取っている人もいますし、外国人留学生に絶対取れないというわけではありません。

  このHMONPの資格を取って、それぞれの地方ごとにあるL'Ordre des Architectesというところに登録をして、独立した建築家として仕事をすることができます。日本でいうところの建築士の資格がないと事務所登録ができないようなものだと思っています。

  次回は、このフランスの資格を取った後、一級建築士の特例制度を使って日本の資格を取る方法についてまとめます。


2018年1月8日月曜日

住宅設計に関するフランス語

住宅の設計などをするときに必要な単語

logement : 住宅
logements collectifs : 集合住宅
logements intermédiaires: テラスハウスなどの住戸ごとに外からのアクセスを持つ住宅
appartement : 集合住宅の中の一住戸

maison : 家、家屋
maison individuelle : 戸建て住宅

共有空間
hall : エントランスホール
escalier : 階段
ascenseur : エレベーター
couloir : 廊下
coursive : 片廊下

各居室の呼称
entrée : 玄関
séjour : 居間、リビング
cuisine : 台所
cuisine ouverte : 居間の一角などに設けられたオープンキッチン、cuisine américaineとも言う
chambre : 寝室
bureau : 書斎
salle de bain : バスタブのある浴室
salle d'eau : バスタブが無くシャワーのみの浴室
wc : トイレ、図面にはwcと書くことが多いが、話すときはtoiletteということも多い
placard : クローゼット、戸棚、
rangement : 収納スペース。rgt.と略す。
couloir : 廊下
dégagement : 廊下より狭い各部屋を結ぶスペース。dgt.と略す。

外部空間
balcon : バルコニー、建物のボリュームの外側に付いているもの
loggia : 建物のボリュームの一部を欠くようにして外部空間にしているもの
terrasse : テラス、屋根のない外部空間を指すことが多い
jardin d'hiver : ガラス、ポリカーボネートなどで囲まれた温室
jardin : 庭

住宅設備
lavabo : 洗面所
baignoire : 浴槽、バスタブ
douche : シャワー
cuvette : トイレの便器
urinoir : 小便器
évier : (台所の)流し
four : オーブン
lave vaisselle : 食器洗い機
lave linge : 洗濯機
frigo : 冷蔵庫、正式にはréfrigérateurというが話すときにはfrigoということが圧倒的に多い
VMC : 換気扇、Ventilation Mécanique Contrôléeの略